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著者ほさかひろこさんインタビュー

-ひろこさんが本書を書こうと思ったきっかけは?

     人は一人で生まれてきて、一人で死んでいくと言います。それが当然のことなのであれば、どうして人は人との結びつきを求め、一人ぼっちを寂しいと感じるのか。どうして生きていくことはこんなにも大変なのか。ある時、双子の一方が妊娠初期に発育出来ずに母体に吸収されるという現象があることを知りました。大方の妊娠はその現象を経た後に確認されるのではと考える学者もいると。なるほど、人は実は二人だったのかと思いました。もう一人の自分の不在を意識することで、人との結びつきがどういうことであるのかが見えてくるように思い、その様子を書いてみようと思いました。

-音が光になって見えるという発想はどこから得たものですか?

    自分が見ている世界と隣にいる誰かが見ている世界は本当に同じなのか? と昔から思っていました。私の「赤」と、誰かの「赤」は同じではなく、誰かの「赤」は私の「青」かもしれない。であれば、誰かの見ている世界は、私の目を通すと、すごくサイケデリックなのかもしれない、、、というような。

    音についても、私は耳で聞くけれど、目で見ている誰かもいるかもしれない。

    また、誰かが誰かをじっと見ていると、何かが育っていくという感覚があります。声をかけるでもなく、手を出すでもなく、けれど、ただじっと、ずっと見ている。そうすると、何かが確実に育っていく。そういう感じを表したかったということもあります。

 

-ピアノと古文書という一見つながりのないことが、小説の中で結びついていきます。古文書はひろこさんの中では身近だったのですか?

     古文書を研究している磯田道史さんという方がおられます。磯田さんのお話をよく聞いていたことがあり、古文書を登場させたいと思っていました。私が小説を読むことで、わけもなく力が湧いたり、何かに支えられている気持ちになったりして助けられてきたように、磯田さんの古文書に対する熱意のようなものは登場人物の助けになるように感じました。

 

-かおり付きの消しゴムやキャンディの缶など、昭和なアイテムがたくさん登場します。

『ふたりがかり』の時代設定は自然と生まれてきたものですか?

     時代設定は、大方の場合、後から辻褄が合うか検証していきます。今回は、登場人物の中に戦争に行った人がいたこと、また、ピアノの歴史に関連する人もいたことなどから、結果的に昭和色の強いものになりました。

 

-人と人とを結ぶものについての、ひろこさんの大事な考えが静かに力強く伝わってきます。この考えをどうしても伝えたいと思う、その辺りの思いを聞かせていただけますか?

     人の無意識というものは、海の底のような深いところで繋がっているというイメージがあります。各地の昔話に見られる共通性については諸説ありますが、それは無意識が繋がっているからではないかと、個人的に思っています。物語を書く際には、深いところの無意識に対するイメージや感覚をもとに書いているので、どうしてもそういう展開になるのかもしれません。

-そもそも小説を書きたいと思ったのは、ひろこさん自身が小説に助けられてきたからだったとか。

     書きたいというよりは書けたらいいなという感覚で、それは、アイドルになりたいというような憧れのレベルでした。ある日、不意に「書けるような気がする」と感じ、書いてみたら書けたという次第です。小説には今も助けられているので、書く側にもなれたことには非常に喜びを感じています。もし、どこかで誰かが、私の小説を読むことで、その日を乗り切れたというようなことがあれば、そんな嬉しいことはありません。その可能性を持てたことは幸運なことだと思っています。

 

-読者から「ピアノへの向き合い方が変わった」「先祖のことを調べてみたくなった」など感想をいただいています。感想を聞いての思いなどお聞かせください。

     それぞれに違った思いが沸いたというのは素敵なことだと思います。先程、「誰かが誰かをじっと見ていると、何かが育っていくという感覚があります」と申し上げましたが、それと似た感覚で、誰かが読んでくださるたびに、小説はどんどん育っていくと思っています。本当にありがとうございます。

​-お話聞かせてくださりありがとうございました。

 

(聞き手:Meiso Canada Publishers 平野かおり)

 

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